第三の塩基対

新たな「DNAアルファベット」、米チームが作成に成功 英科学誌

個人的にはここ数ヶ月で最大のニゥスでありますが、こんなニゥスがあったのを知っていますか。

高校レベル以上の生物を学んだ人ならだれでも知っていると思うが、人間のDNAというのは要するに4ビットの文字列である。
DNAとは日本語に直すと「デオキシリボ核酸」である。
核酸というのはヌクレオチドが重合したもので、アミノ酸:タンパク質の関係とヌクレオチド:核酸の関係は似ている。
このヌクレオチドというのは、リン酸、糖、塩基の三部分からなっており、この糖の部分がリボースかデオキシリボースかによって核酸がリボ核酸(RNA)かデオキシリボ核酸(DNA)になり、塩基の部分の違いがヌクレオチドの「文字」としての性質を決める。
ちなみに、DNAとRNAの遺伝情報は担う分子の種類は変われど文字列としては同等なので「転写」なんですな。この文字列の暗号を実際にタンパク質にする過程で「翻訳」されると。

どういうわけか、地球上の生物の持っている核酸を構成するヌクレオチドは4種の塩基しか使われていない。(正確に言えばDNAではチミンのところがRNAではウラシルになるので5種類といったほうがいいのかもしれないが、同じ「アルファベット」として働いているので4種類としておく)
そして、生物の「翻訳」機構はこの4種類の塩基を三文字ずつ読んでひとつのアミノ酸と対応付ける。
日本語をローマ字入力するときにkとaで「か」を入力するように、UUUでフェニルアラニンGGGグリシン…みたいな感じで対応させていく。(この三文字ずつのあつまりを「コドン」という)
どのコドンとどのアミノ酸が対応しているかをWikipediaから引用してみる。
もし、生物に「デザイナー」がいたならこんな無駄の多い暗号表はつくらんよね 

で、生物のDNAは4ビットであり3文字で一つのアミノ酸をコードしているということは、単純に考えて64種類のアミノ酸を使えるということだ。開始コドンと終止コドンにひとつずつ割り当ててもたっぷり残っている。
しかし現実にはたったの20種類のアミノ酸しか使われていない。
これって超もったいなくないだろうか。アミノ酸というのはこの世に無数にあるのに、たったの20種類!進化は決して「偉大な知性」が導いてきたのではなく手探りで進んできたということが示唆されているといっていいだろう。

実際にあると断言することは今のところできないだろうが、この20種類に含まれていないアミノ酸を使ったタンパク質にはおそらくものすごい薬や化学製品(洗剤とか)になり得るようなものが眠っているに違いないだろう。
プールに入れる水を大量生産可能な時代はもうすぐだ。(あれって何が「水」たらしめているのだろうか?)
どのコドンにどのアミノ酸を対応させるかという国際基準ができたり、またそれを策定する際の争いが起きたりするのだろうか。
(JIS基準ではここは○○だけどヨーロッパ系では××だ、みたいな)

第三の塩基対を入れることで、コドンの数は216個に増える。ということは、新たに152個のコドンを「20種」に含まれないアミノ酸と対応付けるtRNAとアミノアシルtRNA合成酵素(簡単にいえば、この2つが協調してコドンを読んで対応するアミノ酸を持ってくる)さえあれば、比較的簡単に20種以外のアミノ酸を導入することができるそうだ。(もちろん、だれでもキッチンでできますよ、オレンジジュースに浸すだけです。みたいな意味での簡単ではない)

ちなみに今日「生気論」についての話があったんだけれども、、、
自分は分子生物学を勉強していると、「生物は非生物からわかれて生物たらしめる原理があるから生物になった」んじゃなくて、その逆で「化学反応系が進化して生物ができていく過程でイワユル生物らしさというものが付随してきた」とかんがえるようになってきた。
生物が誕生できた確率は10の何十乗分の1なんだよお、となった時に「そんな奇跡が起きるのは神様がいるからに違いない!」と考えるか、「でもその10の何十乗分の1が実際おきちゃったから今自分がいるわけで、起きちゃったことは100%だ」と考えるかの違いではないだろうか。