Webエンジニア以外もQiitaを使うようになるか 上

おことわり

エンジニアという言葉が指す意味はいろいろあるけれども、この記事中ではいわゆるWeb系エンジニア、つまりインターネット越しにBtoCサービスを提供している会社で働くプログラミング系技術職のことを指してエンジニアという言葉を使うようにする。

Qiitaとは

QiitaというWebサービスをご存知だろうか。日本で働くエンジニアだったら、間違いなく一度は見たことのあるサービスであるが、それ以外の人はおそらく見ることがないと思う。

かんたんに説明すると「Qiitaは、プログラミングに関する知識を記録・共有するためのサービス」である。(Qiita自身の説明から引用) なかにはそういう記事を書く人もいるが、基本的には書籍のように体系だった情報ではなく、「こんな問題にぶち当たったんだけどこうやって解決できました!」とか「こういう設計をよくみるけど、こうしたほうがいいよ」とかいった個別性の高い情報を世の中に発信するための場という感じ。 自分もいくつか記事を投稿しているので、ちょっとみてみてもらえるとわかると思う。

https://qiita.com/k5trismegistus

これらの記事はプログラマなら全員「あーそれね」とわかるものではなく、同じプログラミング言語やフレームワークを使っていないと「なにこれ」となるものもあるだろう。 書籍なんかに比べると、かなり特殊性の高い記事が多いというのがなんとなくわかるだろうか、、? Qiitaは日本のサービスだが、ワールドワイドに使われているものとしてはStackoverflow(Q&Aがメイン)やdev.toというものがある。

「エンジニア」文化

「エンジニア」によくいる自分たちを「エンジニア」という特殊な人種だと思いこんでいて、ほかの人と違うアピールをして同類で群れたがる連中は嫌いなんだけれども、Qiitaに代表されるような仕事上の知識や発見を共有する文化は(いまのところ)エンジニア界隈だけのもののように思える。そこは認めざるをえない。 エンジニア界隈でこれが可能になっている理由はいくつか考えられる。

まずひとつめは目的と手段が分離されていること。Webサービスの目的はいろいろある。たとえばレシピ共有とか、ブログホスティングとか、動画共有とか…。 目的が違っていても、裏側でやることはだいたい同じ(といってもよい)。

逆に言うと、手段と目的との結合が弱いため、これによって、技術系(=手段)に関する情報は外に公開しても直接競合企業を利することがない。 Ruby on Rails(クックパッドが利用しているフレームワーク)が使えるようになることと、レシピ情報とレシピ情報を見たい人が集まってくるWebサービスが作れることはまったくイコールではない。

また、エンジニアの就職・転職事情も影響している。 エンジニアの就職・転職時には、面接だとか履歴書・職務経歴書よりも本人の技術力アピールが重要になる。

作成したプログラムそのものを公開、またはOSSと呼ばれるオープンなプロジェクトへの貢献によって測られるのが主だと思う。(OSSというのはなかなか説明が難しい概念だと思うけれども、自分の詳しい分野についてWikipediaの記事を書くのが近い気がする) けどそれだけではなくて、加えてQiitaや本人のHP・ブログなどに投稿している記事も判断の材料として利用される。 技術系記事を書いてインターネット上に公開することは自分の価値の引き上げに直結している。

Qiitaは外の業界でも成り立つのか?

このQiitaのようなコミュニティって、エンジニアの世界以外でも成立するものなのだろうか。

たとえばタクシー運転手のような仕事では成り立ちにくいと思う。 仕事内容が単純労働であるというのもあるけど、なにより他人を利することが自分の損に直結しやすそうだ。仮に自分が穴場を知っていたら、誰にも教えたくない。

一方で、医師・看護師などでは成り立ちやすいと思う。 総合的な判断力や適応力が求められる仕事だし、そのためには病気についての知識や症例を多く知ることがもとめられる。先人の知恵を知ることが役に立つ。また、ほかの業界に比べたら競争によって自分たちの地位が危うくなるということもすくない気がする。

業界によってQiita的なものへの適応性や受け入れられやすさはことなるだろうけれど、ほかの業界へも広まっていってほしい。