War...huh...yeah What is it good for?

ヒストリーチャンネルで、「ベトナム戦争~兵士が見た泥沼化の真実~」という番組を見ていた。
45分かける6話で合計4時間半と、ベトナム戦争好きの自分にとっては非常にものたりないものであったが(正直合計30時間くらいは欲しい)
どうしても日本では影の薄いベトナム戦争、こういうドキュメンタリーが見られるだけでありがたい。
(日本で戦争といえばだいたい太平洋戦争になっちゃうからね。)

この番組の第一話冒頭では、トンキン湾事件のことを「北ベトナムがアメリカ軍の艦船に魚雷攻撃を仕掛けた」事件として紹介している。
トンキン湾事件と言えば、開戦の口実を作るためにアメリカ軍が自作自演を行った事件として有名だ。これは陰謀論者がそういってるとかではなく、アメリカも認めている。
しかし、この番組ではそんなことは一言も言及されない。最終話あたりで、「実はその後~自作自演であったことが判明した…」というナレーションの一つでも入るかと思っていたが、全くそんなことはない。
実は吹き替えの際に削られてしまっているのかもしれないが、録画の際にサイズを削るため主音声(吹き替え)以外はカットしてしまったので確認できない。が、さすがにそこまでのミスをするとは考えにくい。

しょっぱなからこういう一撃をかましてきたこの番組だが、その後もはっきりとおかしいと指摘できるほどの突っ込みどころはないものの、なんか違和感を感じるのだ。

この番組は、アメリカのベトナム戦争介入を結構好意的に捉えているフシが有る。後半は結構反戦運動のことも取り上げるのだが、#1~#4は明らかに好意的だと感じた。
この番組のキャッチコピーは「これはあなたの知っている戦争ではない。これは兵士たちが経験した戦争なのだ。」である。
反戦運動をやってたヒッピーどもにはわからないかもしれないが、我が国の兵士たちは「自由」や「民主主義」を守るため、「世界」の平和を守るため…そんな目的のために戦ったのだ。そういうことを伝えたかった番組なのかもしれない。

カール・シュミットが引用していた言葉の孫引きだが、プルードンは 「 人類を口にする者は、欺こうとするものである。」というようなことを言ったそうだ。
「人類」は、帝国主義的防潮にとって、とくに有用なイデオロギー的な道具であり、その人倫的、人道的形態において、経済的帝国主義のための特別な器である。この点に関しては、プルードンの表現になる次のことばが、当然の修正を加えて当てはまる。すなわち、人類を口にする者は、欺こうとするものである。「人類」 の名をかかげ、人間性を引き合いにだし、この語を私物化すること、これらはすべて~中略~敵から人間としての性質を剥奪し、敵を非合法・非人間と宣言し、そ れによって戦争を、極端に非人間的なものにまで押しすすめようという、恐ろしい主張を表明するものにほかならない。
未来社から発行されている「政治的なものの概念」 の63ページからの引用であるが、まさしくこれは現代のアメリカ単独行動主義にあてはまる。アメリカはまさしく「人類」概念を我がものとして、自らの行動がいわば「神から与えられた使命」であるかのように振る舞う。
(この点で、やはりグローバルな大国というのはアメリカしか存在していないだろう。中国やロシアがいくら軍事力や経済力を持っているといっても、いまだローカルな大国にとどまっているといえる。)

その裏返しとして、アメリカの社会形態と遠く離れた社会はそれだけで悪なのだ。
確かにイスラム教圏における性的差別やインドのカースト制、これらは自分も反人道的であると思うし、そのような社会よりは(理想的な)アメリカ流の社会のほうが優れているとは思う。(現実のアメリカ社会は人種差別もあるし、男女差別もある感じだが。)

とはいえ、だからといっていきなり他の主権国家に乗り込んでいって「俺達に合わせろ、そうすりゃ幸せになれるぞ。」というのはその国の尊厳というものを無視している。
自分たちの理念に「人類」という言葉を使っている以上、アメリカは働きかける相手のことは人間だと思っていない。よくて野蛮人、悪くて人以下の猿、程度にしか考えていないだろう。
そんな野蛮人や猿どもを地球上もっとも洗練された文化人である我々が導いてやろう、という意識がありありと見て取れる。大正義主義とでもいおうか。

実はおなじことは日本でも言われている。韓国を併合していたことについて、「嫌韓流」だとかそのたぐいの人たちはよく、「韓国は日本に併合されるまではインフラもろくに整備されていなかった後進国だった。日本が併合してインフラを整えたり教育を行ったりして発展させて”あげた”んだ。」という。
これもアメリカ的な大正義主義的言表である。

更にいうと、アメリカは本当にこの理念を第一に考えて行動しているわけではない。探せばいくらでも例は出てくると思うが、中南米へ派遣されたアメリカ軍事顧問団をみれば一目瞭然だ。
アメリカの利益のために行動しているのに、それを正当化するために「人類」の語を使っている。まさしく、「欺こうと」しているわけだ。

ソ連に対抗させるためにせっせと武器を送ったビンラディンにやり返されるとは、まさに天罰がくだったということだろうか。(指がつかれてきたので適当にしめた)